マジックをしていると必ずかけてもらう言葉があります。
「もう一回やって」
老若男女問わず、必ず言ってくださいます。
幼児の「もういっかいやって」は純粋です。
ただもう一回、同じ不思議を体験したいだけ。
だからタネがバレない程度にリクエストに応じます。
でも年長から小学生になると、油断できません。
「もう一回やって」に別の動機が加わります。
それはなぜそうなったのかを知りたい、という好奇心です。
だからリクエストには応じません。
不思議は不思議のまま楽しんで欲しいから。
さらに欲を言えばタネを自分で見つけて、マジシャンになって欲しいからです。
大人のもう一回やっても好奇心ですが、そこにさらに敵意が入ることが多い。
「見破ってやる」「お前に負けるもんか」これは特に男性に多い。
勝負はマジックの目的ではないので、できるだけそれを伝えるような雰囲気で終わります。
だからほとんどのマジシャンは「いい人」です。
マジシャンが一番機を配るのは、マジックを見せる場が楽しい雰囲気であること。
これが手先の技術よりも何よりも一番難しい。