僕のロールモデルのじいじは、空いているバスで立っていた

「こういうじいじに僕はなりたい」

阪急バスの車内で僕のロールモデルに会った。
子育て講座の帰り、絵本が詰まったキャリーケースを引きずって僕はバスの席に座った。
その僕のすぐ前に、その男性は立っていた。

同じ地域に住む70代の男性Kさん。「こんにちは」と挨拶をすると、
「ちょっと待ってな。今孫に帰るってメールしてるねん。目が見えにくくてなぁ」
彼は空いてる車内で立ったままメールを送った。

座っている40代と立っている70代、男性同士の会話。
はたから見たらちょっと不思議な光景だったかもしれない。
彼は僕が10年前に見つけた、おじいちゃんのロールモデルだった。

10年前、長女と一緒にこども会に入った。
こども会では毎週土曜日に公園掃除をする。
その公園掃除を一緒にしてくれるご近所のボランティアのかたたち、その中にKさんもいた。

Kさんはいつもにこやかだった。
断言するけれども、いつもにこやかな年配男性は日本ではめずらしい。
滅多に出会うことがないマイノリティだ。

Kさんにはこども会で6年間お世話になった。
そして今は次女が通っている小学校の体操教室でお世話になっている。
週に一回の小学校体育館での体操教室、そこの夜間の施設管理をされているのだ。

Kさんは僕が次女のお迎えに行くと、必ず声をかけてくださる。
「いつもがんばってるなぁ、感心するわ」
それは体操を頑張っている次女への言葉でもあり、毎週21時に次女のお迎えに行く僕への言葉でもある。

バスの中で立ったまま揺られながら、孫の話や管理している小学校通学路の花壇の話をされるKさん。
にこやかに地域の子どもにかかわってくださっている男性。
僕は座席からKさんを見上げて、あらためて思った。

「こういうじいじに僕はなりたい」