グレタ・トゥーンベリとリイクニ・ノンデライコ〜子どもが大人に怒る理由〜

16歳のグレタさんの国連での怒りを表明したスピーチ。
彼女は責任のある立場にいる大人たちに対して怒っていた。
僕が彼女のスピーチから思い出したのも、ある少女の言葉だった。

「大人たちは善悪の判断をしていません」
17歳のリイクニ・ノンデライコ。
1987年公開のアニメ映画『オネアミスの翼・王立宇宙軍』のヒロインだ。

あ、そこの非オタクのあなた、コケないで。
僕はこの映画を中学三年生の時に映画館で初めて見た。
リイクニは両親がいない。教会の援助を受けながらマナという自分と同じ両親がいない5歳の女の子を引き取って2人で暮らしている。

彼女は初対面の主人公の「嫌な時代ですよね」という言葉に躊躇なく即答した。
「大人たちは善悪の判断をしていません」
当時の僕はテレビの前で彼女の言葉に深く頷いたのだ。

僕はその後、高校でいじめを受けた。
教師たちは僕が体育館の真ん中で一本背負いをされたり、靴を投げ捨てられたりしているのを知っていた。
一本背負いは見ていたし、靴のことは教師に僕から伝えた。

だけれども、それに対する教師からの対応は何もなかった。
両親にはいじめを受けていることは言わなかった。
両親は何も知らずに「なんでアンタには友達ができひんにゃろ?」とズレた心配をした。

今振り返ると、僕はそこで怒ってもよかったのだ。だけど僕は子どもが大人に怒っていいということを知らなかった。
いや、これは嘘だ。
僕はいじめ以上のしんどさを避けるために、大人にとって無害な子どもでいることを選んだのだ。

「大人たちは善悪の判断をしていません」
当時僕が頷いたリイクニの言葉は、今大人になった自分に突き刺さる。
グレタさんのスピーチも突き刺さる。

少なくとも、僕は彼女が怒っていることを否定しない。
16歳の子どもが大人に対して怒る理由はわかるつもりだ。
僕もかつて16歳の子どもだったから。