マジックで子どもとアイコンタクトを取れば確実に仲良くなれる

僕は過小評価をしていた。
2年ぶりに講師として参加した『京都府・子育ての達人養成講座』。地域で遊びを通して子どもの育ちに関わる大人を養成する講座だ。そこにリピーターの男性がいらっしゃった。

齢は僕の父親くらい。放課後児童クラブのお手伝いをされているそうだ。その男性が講座の休憩時間に声をかけてくださった。
「トランプの手品、児童クラブでやってます」
それは2年前の子育ての達人養成講座で、僕がお伝えした『世界一簡単なカード当て』。
「ちゃんと目を見て当ててますよ」
その講座で僕は、お客が選んだトランプを当てる一番簡単な方法をお伝えした。それに加えて、ひとつアドバイスをした。
「トランプを当てるときは、トランプを見ながら『これですね』と当てるのではなく、相手の目を見て『これですね』と言ってください」

少しのコツだけれど、アイコンタクトがあるとないとではマジックの楽しさ、不思議さが段違いなのだ。当てる瞬間に目を見る、見られることで、マジシャンと観客の関係はぐんと近くなる。
マジックをする人は全員マジシャンだ。そのマジシャンは観客の子どもにとって初対面の知らないおじさんかもしれない。
目を見て自分のカードを当てられることは強烈な体験だ。その強烈な体験を共有することで、知らないおじさんと子どもはぐんと仲良くなれる。
僕がいつもしていること。まちがいない。
正直なところ、男性に声をかけてもらうまで2年前の子育ての達人講座でそこまでお伝えしたことは覚えていなかった。
それにもしお伝えしたとしても、マジックのタネを操作することに必死で、アイコンタクトまで意識は回せないだろうと思っていた。それなのに、である。

その男性は2年前の話を覚えていてくださった。
「子どもたち、目を見て当てるとみんな大喜びしてくれるんです」
それを聞かせてもらった僕が大喜びだ。
僕は3つのことを過小評価していた。
一つ目は受講者のことを。どうせアイコンタクトまで意識は回せないだろうと。
二つ目は自分の講座の効果を。2年経ってもお伝えしたマジックを続けてくださっていることを期待してはいなかった。
三つ目はマジックの効果を。マジックは誰が演じても子どもを大喜びさせることが本当にできるのだ。
自分がやっている講座なのに、どこかでその効果を疑問視している自分がいた。それを2年前の受講者の男性が吹き払ってくださった。

不思議なマジックでで子どもを喜ばせる大人を増やしたい。そして本当に増えている。
明日からまた心機一転『子どもがワクワクする大人』を増やす活動へのエネルギーをいただいた。